History

【フランス料理の歴史と変貌】

ルネサンスの時代、フランス国王アンリⅡ世のもとへ、イタリアのメディチ家からカトリーヌ王女が料理人を引き連れて嫁いだことにフランス料理の歴史は始まりました。

フランス料理は時代の進歩と共に、市民の嗜好に併せて一部の優れた有能な料理人たちによって、世代を越えて常に改良と進歩を続ける、フランス人にとっては貴重な文化の一部です。

皆様も名前だけは聞いた覚えがあるかもしれない「ポール・ボキューズ」氏、彼もその名料理人の一人です。かつて「ヌーベル・キュィジーヌ(新フランス料理)」がフランスのマスコミ界にもてはやされ、若い料理人たちがヌーベルという名のもとに、行き過ぎた料理を作り出してフランスの料理界を混乱に陥れたことが有りましたが、すぐに「もう一度、古典へ帰れ」と全料理界に向かって警鐘を鳴らした事は有名な格言となりました。現代の日本の若い料理人達には、そんな出来事も遠い過去の遺物となってしまったのかも知れません。
そんな呼びかけに呼応し、次の世代として登場しなお且つ料理の盛付を美しく変化させて名を馳せた人物が「ジョエル・ロブション」氏でしょう。そしてその彼が後継者として指名したのが次の世代の「アラン・デュカス」氏なのです。

その同時期に隣国では、スペインの「エル・ブジ」やデンマークにある「ノーマ」といった複雑で革新的で斬新な料理が現れてくると一世を風靡する様になりました。彼らは厨房を調理場とは呼ばず「アトリエ」と表現する。盛付にはピンセットを使い多様な種類の食材をまるで絵画の如く美しい芸術作品へと変貌させて行き、まるでマジシャンの様だと表現されています。

当然のごとく、フランスの若い料理人たちは強い刺激を受けることになり、見掛け重視の料理を作り始めることになりました。しかしエル・ブジやノーマといった彼らは、自国にある数多くの伝統料理の基礎をもとに、それらを多数複雑に組み合わせて作り上げて評価を得ているのであって、その伝統を知らない者達にとっては一長一短にできるものでは無いと理解すべきであろう。まして日本の若い人たちが、それらを真似することには大きな矛盾を感じてしまう。

フランスにはフランス料理の基本が存在する。「フレンチは香りの料理」とよく言われます。それは各素材ごとに香り高い肉や魚介の味を凝縮したスープを取り、それらに個性豊かな素材やワインの風味を加えたソースを仕上げて添えるからであり、ここに先人たち料理人は、力と工夫を凝らしてきたはずである。これらの素晴らしい遺産を今の世代の料理人はすでに放棄しているように感ぜずにはいられません。

当店はボキューズやロブションといった先人たちと目標を同じくし、フレンチの最も基本である香り立ち力強いソースを追求し続ける道を選びたい・・・。